日本原子力学会誌ATOMOΣ 3月号
ATOMOΣ Vol.53 201103号
日本原子力学会誌
なぜか今頃届いたATOMOΣ3月号のネタがタイムリーだったのでメモ。
http://www.aesj.or.jp/atomos/tachiyomi/mihon.html
目次
- 特集「原子力発電における耐震とは何か」
- 原子力安全・保安院の10年の歩み
- フェニックスから「もんじゅ」へ:高速炉開発と日本の役割
- newsに「JNESとIAEA、原子力耐震安全をテーマに柏崎で国際シンポジウム」
とかあって、
ちなみにこの号、震災前に編集されたもの。
特集「原子力発電における耐震とは何か」
地質調査、耐震設計、柏崎刈羽原発の地震被害の評価、といった内容。
興味を引くのが「機械・電気設備への影響評価」 東京大学名誉教授 野本敏治
2007年の新潟県中越沖地震(M6.8)における柏崎刈羽原発の設備被害評価まとめ。
原発施設での最大震度7。全ての原子炉で設計レベル以上の最大加速度が記録され、なかでも1号機では設計レベル273ガルに対して最大加速度680ガルを記録、とのこと。震度は今回の東北地震と遜色ない。
その中越沖地震による設備損傷状況のまとめ
耐震クラス | 設備の例 | 損傷 |
---|---|---|
As | 原子炉圧力容器、原子炉格納容器、制御棒 | なし |
A | 非常用冷却系、原子炉建屋 | なし |
B | タービン設備、放射性廃棄物処理系 | 一部軽微な損傷 |
C | 主発電機、変圧器、所内ボイラー | 所内変圧器、ダクト、消化系配管など損傷 |
まあ、たいしたこと無くてよかった。
耐震クラス | 設備の例 | 損傷 |
---|---|---|
As | 原子炉圧力容器、原子炉格納容器、制御棒 | 圧力容器・格納容器の一部が損傷、燃料漏れあり |
A | 非常用炉心冷却系、原子炉建屋 | フルボッコ |
B | タービン設備、放射性廃棄物処理系 | フルボッコ |
C | 主発電機、変圧器、所内ボイラー | 知らんけどフルボッコでいいや |
あれか、津波の差か。
原子力安全・保安院の10年の歩み 原子力安全・保安院 原子力安全広報課
「規制と推進を同じ部署が行っている」と最近とみに叩かれる保安院。原子力行政は複雑。原子力安全委員会、JNES。
いわゆる省庁再編のときに通産省資源エネルギー庁と総理府科学技術庁でやってた原子力行政を経産省資源エネルギー庁に一本化したもの。原発推進側? 経産省だし。
IIの「3.原子炉の高経年化への対応」はちょっとすごい。「60年の供用を仮定」とのこと。ちなみに福島第一は運転開始から3月でちょうど40年。まあ仮に原発停止していたとしても、今回の事態(津波による炉と燃料棒保管庫の冷却系機能喪失と、ひょっとしたら地震による圧力容器、格納容器の損傷)は起きたであろう。
保安院の今後の課題として挙げられているのが「安全規制における経験と知見の活用、発電炉のさらなる高経年化への対応、経済的・国際的な状況変化への対応、ステークホルダー・コミュニケーションに関する取り組みの充実、規制当局の品質保証活動の充実などです」とのこと。高経年化への対応ってのは「60年の供用を仮定」ってこと。ウケる。
原子力行政の責任は東電並に重いと思う。